最近、我々の食糧業界では、お米の粉=米粉の議論が大変にぎやかになっています。その根っこには自給率の低さと昨今の小麦価格の高騰があります。つまり小麦粉もかなり高くなってきたので、米に若干補助金を出せば、価格的にも競争できる米粉のパン、麺ができるのではないか?という理論です。さらにそうやってお米の消費が増えれば、今生産調整といって転作、休耕させている40万ヘクタールの水田をもっと活用でき、自給率も上がる、という生産者、行政にとっても大変良い結果となるわけです。
業界紙を見れば、本当にいろいろな企業が「米粉への参入、自社の独自性」を語り、行政・農水省側も「米粉の消費拡大への期待、支援」を表明し、生産者も「もっとお米を作りたい。だったら米粉でパンや、麺にして消費すれば良いじゃないか。」といったように、生産者、行政、加工業者の3社がそれぞれの立場で米粉への大きな期待が高まっているんです。
いろいろな企業というものを、もう少し整理してみますね。まずは既存の米粉製造業者です。この中にもいわゆる伝統的なダンゴの粉、和菓子用の米粉を作っていた会社と、行政の補助制度も使って最初からパン、麺用の新しい用途に向けて研究、製造してきた会社に大きく分かれるんじゃないかなと思っています。それに加えて、粉を作ると言う点では同業である小麦粉製粉企業、原料のお米を扱うという点で接点を持つお米卸業者、これに商社系の企業も今後の大きな市場を期待して興味を示しています。言って見れば、これから爆発するのではないか?という期待と不安?から、今米粉に何らかの関係を持っていなければまずいぞ、と思わせるような雰囲気なんです。
実はこのブログは私自身の考えを整理するために書いています。本当に今後、米粉のビジネスはどのように変化していくのだろう、という大きなテーマです。もちろん当社としてどう取り組むか、ということがついて回るのですが・・・。
さてもう一度よーく考えてみると、一番大事な視点が抜けていることに今頃気付きました。それは肝心のお客様、という視点です。この米粉の議論は現段階では正にプロダクトアウト、生産者側の「これが売れれば良いなあ。」というものですよね。確かに米粉パン、米粉麺が売れれば、生産者も国も、業界も(でも製粉業界にとっては、競合が増えるってことになるのか・・・)良い、うちわで話をしている分には非常に盛り上がる議論です。しかし、なぜそういう市場がそう簡単に実現しないんだろうなあ、と考えてみたら、何だ、結局お客様の欲しがっているものか?という肝心のスタートが間違っていることに気付きました。
それでは「本当にお客様は欲しがっていないか?」というと、私はそうは思っていません。米粉で作ったパンを食べさせてもらいましたが、お米特有の甘み、香ばしさ、もっちり感があり、小麦粉から作った従来のパンに比べて私は日本人が好む特徴はある、と感じています。だからお客様は知らないのであって、それを知ってもらえれば市場は開ける、とおっしゃる偉い方もいます。私も、お客様が何を欲しがっているかは本当は自分では知らない、という考え方に賛成です。その知らないけれども「ああ、こういうものが欲しかったんだ」というモノを提供していくことが、メーカーの喜び、使命だとも考えているくらいです。
ここまで考えて、ではそのお客様に知ってもらい、市場を開拓していくにはどうするか?という問題が本当の焦点なんだな、と思いました。私は今まで「お米と言う原料価格の高さがこのビジネスの最大の問題である!」なんて勝手に見抜いた気になっていましたが、それは世界穀物需給のバランスの変化で前提条件は全く変わりました。もちろん補助金を前提としてビジネスなんて怖くてできないわけですから、この原料価格の小麦に比べての高さ、と言うものは依然課題ではありますが、多収米などの解決策もありそうだ、と感じています。
実はそれよりもっと大事なことは、やっぱり「市場=需要を創造する」ということなのでしょう。今盛り上がっている人たちは「価格が下がれば、米粉パンは売れる」と信じています。でもそれだけで、本当に市場は爆発するかなあ、と思います。パンでは焼いた後から堅くなってしまう速度が速い、など劣化の問題もありそうです。この市場を開拓するために、お客様の視点から何を満たす、どんな喜びをもたらすかをスタートにもう一度このビジネスを組み立てなおす必要がある、と言うことまで気が付きました。
でもまだまだこの問題は考え抜かねばなりません。成功すれば、日本の農業にとっても、国の自給率にとっても非常に良いことであることは間違いありません。しかもその残された時間は、農家の方の年齢を考えるとそれほど残されていない、という危機感もあります。さて、どうするか?引き続きこれについては考えてみたいと思っています。The 穀物カンパニー を標榜する我々にとっても、非常に大きな大きなテーマです。



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