吉野家・安部社長

 安部社長はやっぱりすごい経営者でした。ある食品メーカーの経営者の集まりで、吉野家の安部社長のお話を聞くことが出来ました。以前から一度お話を伺いたいと思っておりましたので、念願がかなったことになります。この日はまず吉野家さんが新しく経営理念を作った、と言うお話から始まりました。50人で三日間の合宿をしたり、さまざまな議論を経てでた結論は「For the people」(全ては人のために)ということだそうです。

 この結論ももちろんさすがだと思いましたが、そこに至る過程で「自分たちの仕事は何の為か」ということを皆で真剣に突き詰めて行ったことがもっとすごいと思いました。そしてそれはこれからの組織の背骨となる、本当に働いている人が腑に落ちる、白けない内容にしたかった、という阿部社長の思いに心から共感しました。阿部社長はご存知の通り、アルバイトで入社され現場から社長になった方であり、現場の人の気持ち、モチベーションをいかに上げるか、と言うことに大変腐心されているように伺えました。そしてその根底に流れる考え方は、いかに白けないで、本気でその仕事に取り組んでもらえるか、ということを組織として実現しよう、としているのだと思いました。

 その「いかに現場に白けないでやってもらえるか」と言うお話の続きとして、「言っている事と、やっていることが違うことが一番駄目だ」とおっしゃいました。これはドキッとしましたね。確かにそうなんですが、これが上司としては一番大変なことです。首尾一貫していること、また言ったら本気でやること、これが出来なければ駄目なのですね。部下は一瞬にして上司の本気を見抜く、ともおっしゃっていました。正に同感です。さらに安部社長は、細部まで矛盾していないかまでを徹底的に考える、とおっしゃいました。これも中々できないことです。つい自分の立場で「これで行こう」と思ってしまいますが、それがこれまでと矛盾していないかをいろんな立場から考える、と言うことなのでしょう。非常に鋭い指摘だと思いました。

 牛丼を販売中止として決断したとき、何を最初に社内に徹底したか、というと「牛丼がいつ復活できるとか、そういう期待は止めよう」ということだったそうです。つまり牛丼に頼るな、ということ。いつになるかわからない、自分たちではコントロールできないことに淡い期待を抱くと、どうしても対策が甘くなる。だから敢えて牛丼はなくても営業利益を5%上げる組織にする、という目標を掲げ取り組んだのだそうです。こういう腹のくくり方ができるかどうかで、組織の強さは違ってくるのでしょう。そして実際これを豚丼や、カレー丼で達成したのだからすごいことです。

 企業は外圧では絶対につぶれない、ともおっしゃっていました。全ては内部崩壊なんだ、と。確かにそうかもしれません。結局は自分たちでつぶれていくんでしょう。どんな状況でも絶対に皆の気持ちが折れずに、やるべきことさえきっちり皆でやっていければ乗り越えていけるんだ、という励ましをいただいた気がします。何でも来い、その度にそれを糧に我々も強くなってやる、という気持ちにさせていただきました。

 最後に阿部社長が今後も目指すこととして「働く喜びを実感する場を作りたい」とおっしゃっていました。これも本当にそうだなあ、と思いました。経営者は全てこのためにあるのではないかと思うくらいです。私もこういうことを何とか実現するためにこれからまた一歩一歩進んで行こうと思いました。阿部社長にはこれからもいろいろと教えていただきたいと心から思っております。ありがとうございました。

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プロフィール

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株式会社はくばく
代表取締役社長
長澤重俊

1966年ひのえうま生まれの43歳。
東京大学ラグビー部卒。(本当は経済学部)
住友商事を経て1992年はくばく入社。
気合と体力で全国を駆け回っています。
ヴァンフォーレ甲府の躍進を心から期待しています。